糖尿病は慢性疾患ですが、進行性であるため定期的な病態評価(検査)が必要です。患者さんは基本的に無症状のことが多いので、面倒くさいと思われがちですが、時々刻々と変化していく病態に合わせて、治療を変更・調節するためには大変重要な事なのです。
尿に糖が出ていないか、タンパク質が漏れ出ていないか、血液やケトン体(脂肪をエネルギーに変えるときに出る燃えカス)はないか?等を確認する検査です。健康な人の場合、尿に糖が出ることはありませんが、糖尿病になると血液中の糖が多くなり、尿に糖が出てきます。一般的に血糖値が170㎎/dl以上にならないと尿糖は検出されません。
糖尿病の合併症の一つである、糖尿病性腎症の初期に尿中に出てくる少量のアルブミンを検出する検査です。アルブミンはタンパク質の一種ですが、腎機能が低下すると本来ならば尿中へ排泄されないはずの大事なタンパク質が排泄されてしまいます。より早い段階での腎症発見の指標として利用します。
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の多さを表す数値で、食事や運動、ストレスなどによって大きく変動します。健康診断等で行うのは早朝空腹時血糖で、この数値が126㎎/dl以上ある場合は、糖尿病型と診断されます。また食後からの時間を決めないで行う、随時血糖検査では200㎎/dl以上ある場合に糖尿病型と診断されます。昨今は、食後血糖値の重要性が指摘されているため、当院では特に指示が無い場合は、食後血糖を確認することが一般的です。
HbA1cとは血糖値の通知表のようなものです。血液中のHbA1cを調べることで、過去1~2か月間の血糖の状態がわかります。通常、血糖値とともに検査することが多く、検査前だけ摂生して、血糖値が正常でもHbA1cが高ければ過去1~2か月間は高血糖状態が続いていたことがわかります。HbA1cが6.5%以上だと糖尿病型と診断されますが、貧血や腎不全等で変化するため判読には注意が必要です。
血液中タンパク質の一種であるアルブミンにブドウ糖が結合したものです。HbA1cよりも早く変化するため、検査前の約2週間の血糖状態を反映するといわれています。通常はHbA1cを測定することが多いのですが、腎不全等でHbA1cでは評価が困難な場合はこちらを測定することもあります。
インスリンは血糖値を下げるホルモンで、すい臓のβ細胞でつくられます。血液中のインスリン量を測定し、インスリンがすい臓で十分つくられているかどうか、十分働いているかどうかを調べます。空腹時や食後と条件が異なる場合や、インスリン分泌に影響を与える薬等を使用中の場合は、測定値の判定に注意が必要です。
インスリンはすい臓のβ細胞でつくられますが、このときCペプチドという物質も一緒につくられます。血液中のCペプチドを測定して、インスリン分泌が十分かどうかを調べます。インスリン治療を行っている方が、インスリンを検査した場合、自分の体でつくられたインスリン(内因性)だけでなく、注射したインスリン(外因性)も含めて測定されてしまいます。Cペプチドを検査すれば、自分の体でつくられたインスリンのみを推定することができます。
すい臓には、GAD(グルタミン脱炭酸酵素:glutamic acid decarboxylase)という酵素がありますが、何らかの原因でGADを異物とみなして抗体が産生される場合があります。このGADに対して産生される抗体を抗GAD抗体といいます。抗GAD抗体は陽性か陰性かで示され、早期の1型糖尿病の診断や、発症予測、インスリン分泌能力の低下予測などに用いられます。
すい臓に存在するIA-2 (膵内分泌腫瘍関連蛋白Ⅱ:Insulinoma-associated protein-2)というタンパク質に対して産生される抗体の事です。抗GAD抗体同様、IA-2抗体も1型糖尿病に高頻度に産生される抗体です。
糖尿病の診断方法の一つです。一定量のブドウ糖が含まれた飲料を飲んで頂き、血糖値の変動に対してインスリンがどのように反応しているのかを調べます。飲む前と飲んでから30分おきに2時間後まで、通常4~5回採血し、血糖値とインスリン値を測定します。75gOGTTで血糖値が2時間値で200㎎/dl以上ある場合は、糖尿病型と診断されます。
各検査の意味をよく理解し、自分の検査値を確認し、自身でからだの状態を把握していくことが大切です。定期的な検査を受けて、血糖コントロールの状態を確認し、病気を進行させないように努力しましょう。