①糖尿病性網膜症
②糖尿病性腎症
③糖尿病性神経障害
上記を3大合併症と呼びます。糖尿病に特有の合併症で、高血糖を治療せずに放置していると、糖尿病発症時から約10年でこれらの合併症が出てくると言われています。
高血糖によって目の底にある網膜という部分の血管が悪くなり、視力が弱まります。中には失明する場合もあります。高度の視覚障害に至るまで症状がない場合や、いきなり眼底出血を起こして眼科を受診し初めて糖尿病を指摘される場合もあります。また、白内障になる人も多いと言われています。眼科専門医による定期的な診察が必要です!
血液から尿を作る腎臓の働きが悪くなると、だんだん尿が作れなくなります。体がだるい、疲れ易い、足や体のむくみ等の症状が現れたら、腎機能が低下している可能性が高いと思われます。腎症の末期状態になると、生命を維持するために人工透析といって、機械で血液の不要な成分をろ過して、尿を作らなければなりません。現在、人工透析になる原因疾患の第1位がこの糖尿病性腎症です。
合併症の中で最も早く出てきます。中心となる足や手の末梢神経障害の症状の出かたはさまざまで、手足のしびれ、けがややけどの痛みに気づかないなどです。全身の神経の動きが鈍ってくるため、筋肉が萎縮したり、筋力の低下や胃腸の不調、立ちくらみ、発汗異常、インポテンツなど、さまざまな自律神経障害の症状も現れます。
糖尿病の合併症と言えば、高血糖により細い血管が傷つくことが大きな原因の上記3つがよく知られていますが、高血糖の影響は細い血管だけでなく、太い血管にも動脈硬化という形で現れます。動脈硬化が心臓の血管にできると狭心症や心筋梗塞、脳の血管にできると脳梗塞、そして足の血管にできれば閉塞性動脈硬化症といった死に至る危険な病気を併発する可能性もあります。
糖尿病は、歯周病(歯周病原菌の感染による歯周組織の慢性炎症)を悪化させる原因の一つと考えられてきましたが、同時に歯周病が糖尿病を悪化させる原因にもなっていると言われるほど、互いに深い関係があることが分かってきました。また糖尿病患者では歯周病が重症化することも指摘されています。
認知症は「アルツハイマー型」と「脳血管型」に大きく分けられますが、糖尿病の高齢者は糖尿病ではない高齢者と比べて、どちらの認知症でも約2倍に増えます。認知症の発症率は、糖尿病の期間が長いほど高く、動脈硬化や腎症などが進んでいる人にリスクが高いことがわかっています。さらに、認知症があると糖尿病になりやすいことも明らかになっています。
このように糖尿病は、放置しておくと大変恐ろしい合併症が出てくる病気ですが、食事や運動、薬剤などの助けによって、その症状をコントロールすることができ、健康な人と同様の生活を送ることができます。まずは糖尿病を正しく理解し、糖尿病を予防すること。そして、もし糖尿病であれば正しく理解し、前向きに病気とつき合うことが大切です。