我が国の定期予防接種のほとんどは子供が対象となっています。大人が予防接種を受けるのは、妊娠前の女性が先天異常や周産期感染、流産・早産を予防するために行う以下のもの(風疹・水疱瘡・麻疹・おたふくかぜ)、またインフルエンザワクチンなどの一部を除けば、感染が心配される地域への海外旅行の時だけと考えている方が少なくありません。少なくとも麻疹(はしか)、風疹(3日はしか)、日本脳炎、百日咳では、子供の頃に受けた予防接種でできた免疫が大人になって弱くなってくることが分かってきました。また、水疱瘡やおたふくかぜなどは、大人になってからかかると、重症化することも知られています。免疫力には個人差があり、一概には言えませんが、予防接種を受けたことがなく、かかったこともないのであれば、予防接種を受けておくことをお勧めします。
◇季節性インフルエンザワクチン(不活化ワクチン)
その冬に流行する可能性が高いと予測されるウイルスに対するワクチンを混合したものが毎年新たに製造されます。H27秋冬シーズンより、3価(A型2種類、B型1種類)からB型株が1種類追加され、4価(A型2種類、B型2種類)ワクチンへ変更となりました。流行株とワクチン株が一致すれば大きな予防効果が期待できます。
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◇成人用肺炎球菌ワクチン(不活化ワクチン)
肺炎は日本人の死因の第3位であり、65歳以上では年間約10万人が肺炎により亡くなっています。肺炎の原因となる細菌には様々なものがありますが、高齢者が日常でかかる肺炎で最多の原因菌が肺炎球菌です。肺炎球菌には90種類以上の型があり、肺炎以外にも髄膜炎、副鼻腔炎、中耳炎などを起こす細菌として知られています。成人用肺炎球菌ワクチンには2種類のタイプがあり、それぞれの特徴があります。「ニューモバックス」は、高齢者の肺炎の原因になりやすい23種類の型を選んでワクチンとしたものです。効果持続時間は5年間で、免疫記憶効果が無いため、5年ごとの追加接種が勧められています。こちらのワクチンは初回のみ、名古屋市の公費助成制度が適応されます。一方「プレベナー」は13種類の型に対応しており、免疫記憶が付きやすいため、1回の接種のみで大丈夫ですが、公費助成が無く、自費負担となります。2つのワクチンを併用することで、より強力かつ広範囲な肺炎予防効果が期待されています。特に、肺に持病がある方、糖尿病、腎臓病などを持病があり免疫力が低下している方は、接種をお勧めします。
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◇帯状疱疹予防ワクチン(不活化ワクチン)
帯状疱疹とは、体や顔の一部に、神経痛のようなピリピリした痛みが起こり、その後水ぶくれを伴う赤い発疹が帯状に出現する病気です。水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスが帯状疱疹の原因で、加齢、疲労、ストレスなど免疫力が低下すると発症します。日本人成人の90%以上が、帯状疱疹になる可能性があり、特に50才以上になると発症率が高くなり、80才までに約3人に1人が発症すると言われています。帯状疱疹を予防するワクチンには2種類あり、それぞれの特徴があります。「水痘・帯状疱疹ワクチン」は、接種が1回で済みますし、値段も安いのですが、免疫力の低下している方は接種出来ず、効果持続時間が短いとされています。一方で「シングリックス」ですが、免疫力の低下している方も接種可能で、予防効果が高いとされ、効果持続時間は長いですが、2回の接種が必要(1回目の2ヶ月後に2回目)で、値段が高く、接種部位の痛みが懸念されます。50才以上の方は予防注射の対象ですのでご検討下さい。名古屋市在住の方は、50才以上の方に、助成制度があります。
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◇子宮頸がんワクチン(不活化ワクチン)
子宮頸がんの予防を目的としたワクチンです。子宮頸がんのほとんどはヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因となって発症することが解明されています。9歳以上の女児・女性が対象で、性交渉開始前に接種を完了することで最大の予防効果が得られます。残念ながら予防接種だけでは全ての子宮頸がんを防ぐことはできませんので、20歳以上の女性の方は2年に1度、子宮がん検診の受診をお勧めしています。
*名古屋市民の小学6年生から高校1年生相当年齢の女子は自己負担無料です。ガーダシル(4価のHPVワクチン)は初回、2ヶ月後、6ヶ月後の3回接種となります。一方、シルガード9(9価のHPVワクチン)は、接種開始時の年齢および接種間隔により異なりますが、2回で済む場合もあります。下記参照。
定期接種
(1)名古屋市に住民登録がある方
(2)小学6年生から高校1年生相当年齢の女子(令和4年度は、H18年4月2日からH23年4月1日生の方)
*H18年4月2日からH20年4月1日生の方は、通常の接種対象年齢を超えても、R7年3月31日まで接種できます。
キャッチアップ接種
過去にHPVワクチン定期接種を合計3回受けていない方で、H9年4月2日からH18年4月1日生の方は、キャッチアップ接種が可能ですが、令和7年3月31日までの期間限定となります。
(1)名古屋市に住民登録がある方
(2)平成9年4月2日から平成18年4月1日生の方で、子宮頸がんワクチンの接種を3回完了していない方
シルガード9(9価のHPVワクチン)2023年4月1日から公費接種が可能です。
1回目の接種を15歳未満で受けた場合、初回、6ヶ月後に接種の計2回。
(1回目と2回目の接種間隔が短い場合は、3ヶ月以上間隔をあけて3回目の接種が必要になります)
1回目の接種を15歳以降に受ける場合、初回、2ヶ月後、6ヶ月後の計3回接種が必要です。
*すでにサーバリックスやガーダシルの接種を開始している方も、次回の接種をシルガード9で行うことは可能です。
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◇麻疹・風疹混合ワクチン(生ワクチン)
麻疹はわが国でも毎年発病の報告がある、非常に感染力の強いウイルスです。一方で風疹も、近年感染の拡大が指摘されています。麻疹ワクチン・風疹ワクチンともに接種を受けた人のほとんどが抗体を獲得しますが、数%の方に抗体を獲得できない方や、一度できた免疫が年とともに弱まって最終的に免疫が消える方が出てきました。定期接種以外の方でも任意接種として同ワクチンを接種することができます。ウイルスの抗体価を測定し、陰性の場合に接種することをお勧めします。
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◇おたふくかぜワクチン(生ワクチン)
おたふくかぜウイルス(ムンプスウイルス)の感染によっておこる流行性耳下腺炎を予防します。子供の病気と思われがちですが、大人がかかることもあり、思春期以降にかかると症状が重くなると言われています。ムンプスウイルス抗体価(IgG)を測定し、陰性の場合には、接種することをお勧めします。
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◇みずぼうそうワクチン(生ワクチン)
水痘・帯状疱疹ウイルス感染によっておこる水痘や帯状疱疹を予防します。幼少期であれば軽症に経過することが多いのですが、大人の発症例はしばしば重症化すると言われています。抗体価を測定し、陰性の場合に接種することをお勧めします。
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◇A型肝炎ウイルスワクチン(不活化ワクチン)
A型肝炎は、A型肝炎ウイルス(HAV)によって引き起こされるウイルス感染症です。A型肝炎に対する抗体保有率は年々減少の傾向があります。発展途上国を中心に海外では現在も広く伝播がみられるので、特にアフリカ、アジア、中南米への海外渡航者の方は接種をお勧めします。(原則3回接種法を行います。初回・4週間後・6カ月後)
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◇B型肝炎ウイルスワクチン(不活化ワクチン)
B型肝炎ウイルス(HBV)はヒトの肝臓に慢性持続性感染を起こし、その内10~15%が慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌を発症することが知られています。血液に接する機会の多い医療従事者や清掃業等の感染リスクの高い職場への就労予定者では接種をお勧めします。また留学の際に接種を要求されることもあります。(3回接種:ウイルス抗体価を測定後、初回・4週間後、6カ月後)
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◇日本脳炎ウイルス(不活化ワクチン)
日本脳炎ウイルスは水田や沼などに発生するコガタアカイエカなどの蚊によってウイルスに感受性のある脊椎動物の間で伝播し、ヒトはウイルスを保有している蚊に刺されることによって感染します。日本国内のブタからは西日本を中心に現在でも日本脳炎ウイルスが検出されています。また日本脳炎は東南アジアのモンスーンアジア地帯には広く分布しています。特に雨季に渡航される方は、出発前に予防接種を受けておくことが強く勧められます。
接種方法:初回、1~4週間後、1年後の3回接種
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◇狂犬病ワクチン(不活化ワクチン)
狂犬病は日本、英国、スカンジナビア半島の国々などの一部の地域を除いて世界中に存在し、狂犬病のウイルスに感染した犬、猫、キツネ、アライグマなどの哺乳類動物に噛まれたりすることで感染します。哺乳動物と接触する機会の多い、海外長期滞在予定者は接種をお勧めします。(3回接種法:初回・1週間後・4週間後)
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◇破傷風トキソイド
破傷風は、土壌中に広く棲息する破傷風菌が作る毒素によって起こされる病気です。全身がこわばるのと、筋肉の痙攣が見られます。我が国では大多数の人が子供の頃に3種混合(DPT)ワクチンという形で破傷風ワクチン(破傷風トキソイド)を投与されているはずです。しかしDPTワクチンによる破傷風の獲得免疫は有効期間が約10年であるため、30歳以上の方では破傷風に対する免疫が消失していると予想されます。海外旅行に行かれる方、建設現場で働く方、農業に従事する方、家庭菜園や園芸などで土をいじる方等は追加の接種をお勧めします。
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